農業・農村の健全な発展と農村環境を守るために
多くの公共事業は調査計画から始まり、事業実施中、完了後にその事業を評価し、次の事業で改善すべき点を調査し結果を公表します。このため、地域計画では農業・農村を整備する事業の計画づくり・事業効果の測定・環境調査など、事業そのものの必要性・妥当性の判断を目的に実施する「調査計画」という分野を担当しています。
調査計画は事業の根幹であり、巨額の投資を伴う公共事業の妥当性を判断する非常に重要なプロセスです。また、事業の評価とはその投資に見合う効果(事業効果)が得られているか、地域の農業をはじめとする経済に良い影響を与えているか、そして自然環境の創造に貢献しているかなど様々な視点から統計値やデフレター等を使って定量的に評価するものです。数値に表せない効果については関係者の声や地域の小さな変化を汲み、クライアントである行政機関を通じて様々な表現方法で表せるよう提案します。これらを事業の効果としてまとめ「地域農業の発展に貢献する事業」を展開させることも地域計画の重要な仕事です。このように調査計画の仕事では農業経済・農村計画を専門とする技術者の力が求められ、事業の適正かつ円滑な推進に重要な役割を果たしています。
農村地域計画・農村環境分野の仕事
普段の仕事
事業効果の測定
公共事業を実施する際、その事業の経済的な妥当性を確認するために、費用対効果分析を行います。事業効果は、B(事業により発現する全ての効用)とC(整備する施設・一体となって効用を発揮する施設の費用)から、定量的に測定します。
B/Cが1を上回っていれば、その事業は経済的に妥当性が有りとなります。実際の測定は表計算ソフトで計算しますが、事業目的を把握しながら効果の算定条件や効果項目を公正に設定する技術力には、多くの知識や経験が求められます。
地域農業ビジョンの作成
担い手の高齢化や過疎化の進展など、農業や農村を取り巻く環境は厳しさを増しています。そのような状況の中で、農業や農村が抱える諸問題の解決方策を考え、明るい農業や農村の未来を考えることは、地域計画分野のやりがいのある仕事の1つといえます。
農業や農村の現状を農家の代表者や営農を指導する行政機関等への聞取り調査から把握し、地域が目指す農業や農村の将来像をビジョンとしてとりまとめます。時には、地域住民と行政担当者で行われるワークショップや事業検討委員会で技術的なパートナーとしてビジョンとりまとめをコーディネートします。
現場での仕事
効果に使うデータの収集
効果算定で用いるデータの収集は、統計値などの既存資料から得られないことが多く、その場合は現地で実測することになります。例えば、用水施設の更新事業の効果算定では、農業用水が支える農業生産量を測定するために、ほ場で実証試験を行うこともあります。農業用水が供給されない場合の水稲の生産量を実験的に行うことで、用水事業によって維持される水稲生産量を定量化することが可能となるのです。そのほか、排水事業で発生する災害を未然に防止する効果を測定する際は、想定される浸水被害により生じる建物の被害程度を設定するために建物の床高を調査し、地域の実情に合う算定条件を設定します。
環境調査
ため池や用水路などを改修する事業の環境調査では、事業対象地域に生息する動植物(魚類・鳥類・昆虫類・植物等)の調査を行います。地域の環境に関する文献調査(自然・文化・歴史・景観等)や聞取り調査を行うこともあります。これらの環境調査結果より、事業を実施する際の環境配慮計画を策定します。事業の主目的である地域の農業生産性向上・防災・減災などの安全性向上のほか、地域の自然環境や生活環境にも配慮した事業計画を策定することが地域計画の重要なポイントとなります。